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  【 はじめに

   UTAUライブラリ「戯歌ラカン」をメインに使用した雷音舎の2ndアルバム。

   "ODYSSEY"

   ギリシア神話のオデッセイをモチーフに作られた「出航と沈没を繰り返す男

   の絵画」がコンセプトとなる本作では、露店に並べられた贋作のような民族

   音楽が前作よりもまとまった世界観で描かれる。

   そして、ここにはもう一つの側面から見る物語がある。


 
 
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 「聞きたまえ」


 薄暗い倉の中で淡く光るように囁かれた声に私は驚いて辺りを見回した。
 違う、祖父の声じゃない。

 「聞きたまえ」

 二度目の声に応えようとして暫くの静寂が流れた後、私はその声の主に気付いた。

 「そう、こっちだ」

 まさか絵が喋るなんて...

 向かい合って唖然とした私を前に、声の主は一切表情を崩さないまま言葉を続けた。

 「初めて見る顔だな。また持ち主が変わったのかね。」

 静かな威厳を豊かな鬣にたくわえ、私を見つめる眼は哀しみにも似た色を宿す。

 蒼い海の神話に準えた絵画の男、航海士とは彼のことである。と言うのも、この絵は私の
祖父が隠し持っていた絵画の一つであり、長い間この倉にしまい込まれていたものだ。
足腰が弱った祖父の代わりに、私が倉の整頓をしていたのである。

 しかし、喋る絵画がいるとは。

 「あまり驚かすつもりはなかったのだがね。
私がここに閉じ込められてから長い時間が経った。
数え切れない程の戦があり、短くも安寧の日々もあった。
その繰り返しの中で多くの人々が私の前で生まれ、そして死んでいった。」

 「しかし、どうだろう。この絵に見る物語にはどうも"切れ目"というものが無い。
始まりの日が訪れると何も思い出せなくなる。まるで、終わりと始まりが間違った場所で
結ばれているようだ。文字通りの悪夢だ。」

 「私が"起きている"時間は短い。始まりの日が訪れると私は再び眠りに着いてしまう。
物語が始まるのだ。誰かの助けがない限り、私は永遠にこの物語を繰り返すだろう。
始まりと終わりが誤った場所に存在する世界で。」

 「そこのお前さん、もし良ければなんだが、私を正しい場所へと導いてはくれないか?
今の私には君が唯一の頼りなんだ。」

 その目はただ静かにじっとこちらを見つめている。

 「皮肉だな、私は航海士だと言うのに。」

 私は彼の名を呼ぼうとした。だが、思い出せない。
 これから暫くは旅を共にする者同士だ。聞いておこう。

 「良いよ。でもまずはあんたの名前を教えてくれ。」

 「私の名は、戯歌ラカン。」

 「船の汽笛が聞こえるだろう?始まりの日がすぐそこまで来ている。」


 ―これは、回り続けては辿り着けない場所へ向かう航海士の話である。
  虹色烏だけがその環のヒビを知ると言う。



 
 
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